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後遺障害について

- 高次脳機能障害

Residual Disability

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは

「高次脳機能」とは、コミュニケーションをとったり・考えたり・記憶したりなどといった、社会適合のための特徴的な脳機能のことを指します。手足を動かしたり・見たり・聴いたり・呼吸したり・ホルモン分泌したりなどといった生命維持に必要な身体的な脳機能と比較して、そう呼ばれています。

「高次脳機能障害」とは、脳の損傷によって、認知能力、行為計画遂行能力(行為の計画と正しい手順での遂行)、記憶力[以前のことを覚えていて思い出せる力]、記銘力[新しい事を覚えて記憶にとどめる力]、思考力、判断力、言語力、注意持続力などに障害のある状態です。意識障害や認知症なども含まれるものであり、「器質性精神障害」とも呼ばれます。
脳の損傷によって、身体性機能に障害のある状態については、四肢麻痺のページをご参照ください。

損害賠償項目

特に高次脳機能障害の後遺障害であることで争点となりやすい損害項目(法的相場よりも低額な提示がされやすい損害項目等)としては、例えば、次のようなものがあります。

  • 逸失利益
  • 付添介護費用(施設費用やヘルパーなどの職業人介護費用/近親者介護費用。将来分含む)
  • 慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)
  • 近親者固有の慰謝料
  • 自宅改造費(介護用ベッド等将来分含む)
  • 介護用車両の購入費、改造費(将来分含む)
  • 介護雑費(カテーテル、おむつなど将来分含む)
  • その他

後遺障害等級の認定要件

脳損傷の存在等を前提に、障害の程度を、次の能力の視点から判断します。

① 意思疎通能力(認知力、記憶力、記銘力、言語力等)
② 問題解決能力(理解力、言語力、集中力等)
③ 作業負荷に対する持続力・持久力(意欲、疲労感等)
④ 社会行動能力(協調性、感情コントロール等)

脳の器質的損傷にともなう症状であるため、高次脳機能障害の後遺障害等級認定のためには、まずは基本的に、MRI、CT等画像検査による脳損傷の画像結果の存在が前提となります。

傷病名は、脳挫傷、脳出血、外傷性くも膜下出血、急性硬膜下結手、急性硬膜外血種、脳室出血、びまん性脳損傷、びまん性軸索損傷などです。
これらの存在を前提に、事故後の意識障害の存在とその結果、神経心理学的検査結果、事故前後の日常生活状況の差異報告などが、重要な後遺障害の判断要素となります。

▼事故直後より一定の意識障害がなければ通常脳機能に由来する障害は生じない(意識障害がなかったのに何らかの障害が出ている場合にはその障害は脳機能に由来するものではない)と考えられており、事故直後の治療と意識障害の程度や期間についての病院による記録が重要となります。
代表的な記録方法は、「JCS」または「GCS」と呼ばれる2つの方法ですが、これを知ることで、脳機能由来の後遺障害の可能性に関しても、事故直後より、知ることができます。

▼神経心理学的検査としては、例えば次のようなものがあります。

  • HDS-R(知能検査)
  • MMSE(知能検査)
  • WAIS-Ⅲ(知能検査)
  • WMS―R(記憶力検査)
  • RBMT(記憶力検査)
  • 三宅式(記銘力検査)
  • WAB(失語症検査)
  • BATS(遂行機能障害検査)
  • D―CAT(視覚注意力検査)
  • CAS(意欲検査)
  • PASAT(聴覚注意力、遂行能力検査)
  • その他

すべての検査をしなければならないわけではありませんが、適正な後遺障害等級認定のためには、知能、記憶、情報処理能力、遂行能力、言語能力などのうち障害がありうる部分について検査をし、その結果を得ておく必要があります。
こういった検査結果について、「後遺障害診断書」や「神経系統の障害に関する医学的意見」などに記載してもらう必要があります。
手間と時間のかかる検査もあるため、例えば「検査によっては、作業療法士(OT)や理学療法士(PT)などが多数配置されている病院でないと実施してないことがある」など、実施している病院も限られますので、注意が必要です。

高次脳機能障害の後遺障害等級

症状の程度 後遺障害等級
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの 要介護1級
高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの 要介護2級
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの 3級
高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの 5級
高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの 7級
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの 9級
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの 12級
通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの 14級(※脳損傷の存在が合理的に推測できるものの、明確な画像等の他覚的所見の認められず、わずかな能力喪失が認められる場合は14級に留まります)

※脳損傷をともなわない精神障害は「非器質性精神障害」と呼ばれ、精神症状の程度に応じて9級、12級または14級の後遺障害等級となります。

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部位ごとの認定基準

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