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労災事故

2021/07/15

アスベスト被害者の令和3年5月17日付アスベスト訴訟最高裁判決について

令和3年5月17日、アスベスト被害に関する損害賠償請求訴訟の最高裁判決が4つ下されましたが、損害賠償責任の有無に関する結論のみを述べると、次のことを判示したものとなります。

  • 「屋内」建設作業従事者について、【1975年(昭和50年)10月1日から2004年(平成16年)9月30日までの間】に作業従事し、当該期間やその後に石綿(アスベスト)関連疾患(肺がん等)を発症した場合、国等の損害賠償責任が認められる。
  • うち屋内吹付作業従事者については、【1972年(昭和47年)10月1日から2004年(平成16年)9月30日までの間】に作業従事し、当該期間やその後に石綿関連疾患を発症した場合、国等の損害賠償責任が認められる。
  • 必ずしも「労働者」とは言えない一人親方等の被害者に対する損害賠償責任も認められる。
  • アスベスト含有建材が被害者の稼働する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実(「建材現場到達事実」)は、国土交通省データベース掲載情報や建材シェア確率計算による推認が出来る。

なお、国の違法行為については、次のように判示されています。

「昭和50年の改正後の特化則が一部を除き施行された同年10月1日には、安衛法に基づく規制権限を行使して、通達を発出するなどして、石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として、石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督するとともに、安衛法に基づく省令制定権限を行使して、事業者に対し、屋内建設現場において上記各作業に労働者を従事させる場合に呼吸用保護具を使用させることを義務付けるべきであったのであり、同日以降、労働大臣が安衛法に基づく上記の各権限を行使しなかったことは、屋内建設現場における建設作業に従事して石綿粉じんにばく露した労働者との関係において、安衛法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。・・・・(中略)・・・・規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法である状態は、昭和50年10月1日から平成16年9月30日まで継続し、同年10月1日以降は解消されたものと解するのが相当である。」(平成30年(受)第1447号、第1448号、第1449号、第1451号、第1452号各損害賠償請求事件・最高裁判所令和3年5月17日第一小法廷判決)

当該最高裁判決によれば、1972年(昭和47年)10月1日から2004年(平成16年)9月30日までの間の屋内建設作業従事者等のアスベスト被害者は、一定の救済が図られることになりますが、当該被害者に限らず、国による救済制度の早期創設によって、全てのアスベスト被害者の実効的な救済がなされることを望みます。

 

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